ナツキとアキコ

ほんの些細な事だった。

今思えば、どうでも良い、詰まらない事だった。

夏希と喧嘩をするのは珍しくない。

よくあることだ。

いつもの事なら、お腹が空く夕食時までにゎ

お互い痺れを切らして仲直りするのがお決まりのパターンだった。

よく喧嘩をして、すぐ仲直りする。よく泣く。

ボクと夏希ゎいつもそんな調子だった。

しかし、夏希がボクの部屋を出て2日が経つ。

今回ゎ本気らしい。

「・・・夏希ちゃん、帰って来ないね。」

ソファーの端に、ちょこんと座っている秋子が言った。

『こうなるのゎ時間の問題だったんだよ。』とボク。

「でも本当は、二人とも分かり合ってるじゃない。」

『分かり合ってるからこそ、離れないといけない事もあるんだ。』

「難しいのね。大人って。」

『仕方が無いんだ。大人なんて、なりたくなかったよ。』

「夏希ちゃんに何か伝えとく事はある?」

『冷凍庫のアイス、買い過ぎだ!って。よろしく言っておいて欲しい。』

「上手くいけば、伝えられると思うわ。」

部屋のあちらこちらで、夏希と過ごした思い出が散らばっている。

無理に忘れようとは思わない。

いつかきっと、夏希は帰って来るはずだ。

数日なのか、1年後になるのかは、分からないケド。

悲しみに時間を使う程、時間は余っていない。

ボクにも、夏希にも、新しい生活が始まっている。

『秋子ちゃん、今晩ゎ炊き込みご飯にしよう。』

「わーい。嬉しい。デザートは梨にしてね。」

何度となく繰り返してきた、こうしたやり取り。

そうやって、季節が巡って行く事を、ボクゎ知っている。

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